lonesomequeenの日記

ひとりごとをつれづれに

認知症とは、その状態を表す言葉

その方は、小さい頃から頭が良くて、スポーツも万能でした。

公立大学に学び、市職員として定年まで勤めました。

その後、大学の教員として招かれ、65歳まで働いておられました。

その時代、高学歴の女性が仕事を持って働いていたら、結婚は難しかったのかもしれません。

ご本人が望まなかったのかもしれません。

ご兄弟も亡くなり、その方の直系血族は誰もいなくなりました。

物忘れがひどくなり、毎日のように物が見あたらなくなりました。

一時は人に盗まれたと信じておられた時もありましたが、ご自分の物忘れの結果であると今ではご存知でいらっしゃいます。

長谷川式簡易スケールでは、その方の認知能力の低下を裏付けることはできませんでした。

認知症は病気そのものの名ではなく、脳の変成やその他の病気の影響などによって生じる障害の状態を言います。

人間の認知能力を損なう原因は、一律ではないのです。

ただ、その苦しみは同じような経過を辿ります。

その方は言いました。

「まさか私が老人ボケになるとは思わなかった。

ボケていることを友達には言えない。友達だから本当のことを話したいけれど、ボケてしまったとどうしても言えない。それが友達を騙しているような気がしている」

 

世の中では認知症になってしまうと、もはや人としての尊厳を失ってしまうように思っている方がたくさんいます。

 

大切なことを忘れてしまうのは確かです。

だからといって、人としての尊厳を失ってしまうわけではないのです。

 

この方の苦しみは、認知症に苦しむ全ての方の苦しみです。

 

決してその方が損なわれてしまうのではありません。